2冊目の本『Days of Night』(ニューヨークと東京の写真集)が完成したとき、私は一文無しで途方に暮れていた。だから、友人の報道写真家から電話をもらったのは、不調の時期だった。彼はデジタルを用いるようになり、車もアパートもバッグもジャケットもすっかり綺麗にして、バッグ3個分のフィルムを処分することにしたのだった。私に電話する方がただ捨てるより簡単だとでも思ったのだろうか…。 とにかく私は嬉しかったので、彼にビールを奢った。それにしても、何を撮ろうか。フィルムの一部はとても古く、空港でX線を浴びていた。使用済みのものが混じっている恐れもあったので、私はまず、オスロ市内で自宅の近隣からぼちぼち撮影することにした。建築物のディテールのほか、グラフィティ、オブジェ、木々や草花など、移り変わるため見逃しがちではあるが重要な、街のアイデンティティをなす、こうした部分を観察した。都市の建築は、時代や歴史を如実に表し、変化のプロセスも示している。近代オスロの大部分は19世紀末に確立されたものだが、その時代の文学や絵画は、私のこのプロジェクトのインスピレーションにもなった。

タイトルの“Oslo F.”は、二つの映画、「クリスチーネ・F ~麻薬と売春の日々~」と「オスロ中央駅の死」から考えた。「F」が何を意味するか、解釈は自由だ。フィクション(虚構)、フォトグラフ、ファンタジー、フラワー……あるいは、都市にある「虚構」区域かもしれない。