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Snapshots taken by homeless people.
日本初、ホームレス状態にある人たちがカメラで街を切り取った写真集

クラウドファンディングで600万円以上の支援を集めた話題のプロジェクトがついに書籍化!
彼らの世界をみる視点が、世界が彼らをみる視点に変化を与えることを願って。

・河川敷で10年以上暮らす元建設業の男性
・ネカフェ(インターネットカフェ)を転々とする元ホストの男性
・教会に通う元引きこもりの女性

カメラを手にしたのは、年齢も性別も状況もさまざまなホームレス状態の人たち。巻末には1人ひとりのインタビューを収録。

(pp. 138-139)美術館。子どものあれで、懐かしいなと思って。幼稚園のとき、先生に「うまく描けましたから、 二科展に出したら優勝したんです。子どもさんと同行してください」って言われて。新聞に名前載ってね。 ここで表彰式やったの。この階段で、家族で、写真撮って。

(pp. 74-75)別に僕が三脚を立ててカシャカシャ撮ったんじゃなくて、バスに乗って撮ったんですよ。ここで撮りた いなっていうポイントではあったんですけど、尾崎豊の 「十七歳の地図 SEVENTEEN'S MAP」を意識して撮りました。歩道橋が歌詞の中に出てくるんですよね。

【発起人】
2010年から大阪でホームレス支援を続けてきた認定NPO法人「Homedoor」。
代表の川口加奈は「プロフェッショナル 仕事の流儀」「セブンルール」などで特集される注目の社会起業家

● 視点を変える
わたしたちは2017年からホームレス状態の人たちにカメラを渡し、日常を撮影してきてもらうという活動を続けてきました。
それぞれの視点で切り取った日常の風景には、独自の世界が広がっています。いつもの川沿いのベンチから見る朝焼け、夜の公園、隣人の昼寝。レンズを通してのぞいた視点がそのまま、そこにあります。
また、撮影された写真にはしばしばストーリーが存在します。
たとえば「なぜこの写真を撮ったのか?」と質問すると、昔自分が大工として働いていた頃に建てたビルだったり、よく休憩をする公園に置いてあるオブジェだったり。1枚の写真から背景にある思いもよらぬストーリーが浮かび上がります。
「ホームレス」は状態を指し、人に対して使う言葉ではないため、本書ではホームレス状態にある人もしくはカギカッコつきの「ホームレス」と表記を統一しています。
『アイム』というタイトルには、「ホームレスという1つの人格はない」というメッセージを込めました。
撮影者ごとにページブロックが分かれているこの写真集の特徴を示した言葉にもなっています。

● 誤解と偏見を解消する
このプロジェクトの核は、ホームレス問題について「まず、知ってもらいたい」ということにあります。
ホームレス問題は、ほかの社会課題に比べて支援金が集まりにくいという傾向があります。
なぜなら、よく「ホームレスになるのは自分の責任だ」と思われてしまうからです。
しかしながら、ホームレス状態に陥るきっかけは、突然の病や失業、介護離職による困窮、人間関係の悪化など、誰にでも起こりうる出来事がほとんどです。
わたしたちは、写真集を通して多くの人がホームレス状態にある人たちの視点や声に触れるきっかけをつくることで、新たな理解を促し「誤解と偏見」を解消する機会をつくりたいと切に願います。
そして、本の売上はHomedoorから、ホームレス状態の人たちへの支援に役立てられます。

● 新しい支援の形をつくる
「路上での生活って、心が死んでいくんです。1日がね、違った意味で『時間との戦い』なんです。 早く日が暮れてくれへんかなーって。 路上で生活してることを恥ずかしいと思っていたし、人目も気にしていた。でもカメラを託されて、心が死んでいた生活の中に、生きる目的が生まれたんです。」 (朝日新聞の記事より、撮影者のインタビューの一部より抜粋)

【巻末解説】
フォトジャーナリスト安田菜津紀

「彼らは街をよく知っている。ヘリコプターで見下ろしたような風景が見える場所、スズメの子どもたちが生まれる季節、ひっそりとキツネが暮らしている茂み、猫が顔を出す小窓。私が普段は黙って通りすぎてしまうであろう瞬間を、カメラでそっと、拾い上げてくれていた」(解説より抜粋)