生命を拒む「毒水」の変容と再生。

秋田県仙北市にある一級河川「玉川」。玉川の源流付近ではPH1.2の日本一の強酸性水が噴出し、辺りは草木も生えず生物も住めず、一晩で包丁をも溶かしてしまうことから死の川「玉川毒水」と呼ばれている。そこでは轟音と煙とともに毎分約9,000ℓの酸性水が湧出する。人の手を寄せ付けない原始の自然として、恐れを抱くとともに強く惹かれ、十余年にわたり撮影を続けてきた。「玉川毒水」を巡る毒水と清水、自然と人の関係を見つめなおそうと「瞬間と循環」をテーマに撮影した。源流から下流へと水を伝い、玉川流域のまだ見ぬ変化を追い続けた。

 

<草彅 裕(くさなぎ・ゆう)プロフィール>
秋田県仙北市出身。東北芸術工科大学大学院芸術工学研究科デザイン工学専攻修了。大学在学中に写真家・民俗学者の内藤正敏と出会い、本格的に写真を始める。秋田で撮影した雪夜のシリーズ「SNOW」で写真新世紀 佳作賞(蜷川実花選)を受賞。KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭の公式プログラム「ネイチャー・イン・トーキョー」にフランスの新聞社「ル・モンド」より選出される。キヤノン「SHINES」受賞(梶川由紀選)。著書に『SNOW』『PEBBLES』がある。現在では生まれ育った秋田県内の自然や風土を、写真でしか捉えることのできない不可視の「瞬間と循環」をテーマとして撮影。秋田を拠点に国内外で多数の個展、グループ展において発表を続けている。