「読むことに我を忘れている人の表情には、常に何か光り輝くものがあるような気がしてならない」――ポール・セロー

ナショナルジオグラフィック誌の表紙となった「アフガニスタンの少女」で有名な写真家スティーヴ・マッカリー(マグナム・フォト所属)による読書する人々のイメージで構成した写真集。カフェ、公園、寺院、雪山、機内、路上など、世界各地のさまざまな場所で、さまざまな国、年齢、性別の人々が読むことに没頭するつかの間を捉える。著者の前書きにあるようにこの写真集はアンドレ・ケルテスが1971年に刊行した同名写真集(日本語版2013年創元社刊行)へのオマージュである。マッカリーは30代前半で、かつてケルテスが住んでいたニューヨークのビルに住み、ロビーに展示してあった写真をいつも楽しんでいたという。前書きは作家のP.セロー(村上春樹による翻訳『ワールズ・エンド(世界の果て)』がある)が寄稿している。

 

[著]スティーヴ・マッカリー(マッカリー,スティーヴ)
スティーヴ・マッカリー(Steve McCurry)
1950年生まれ。アジア各地に暮らす人々を題材とした印象深い色彩の作品で有名な写真家。マッカリーのとらえる人々の物語は、洗練された伝統的ドキュメンタリーのスタイルで、言語や文化の壁を越える。報道写真家としてのキャリアは、30年以上前に現地人の衣装を身にまとい、国境を越えてパキスタンからアフガニスタンへ入国したときに始まった。その注目すべき取材によってロバート・キャパ賞を授与される。これは稀有な勇気を伴う比類ない企てを示した写真家に与えられるものだ。その作品は美しく、見る者の胸に高揚感を与え、印象を刻み込む。マッカリーは、国際的な写真家組織“マグナム” のメンバーの一人で、ナショナルジオグラフィックなど数多くの国際的な雑誌・刊行物に定期的に写真を提供してきた。1985年には史上初めて同一年に世界報道写真賞4部門で最優秀賞を受賞。以来数多くの作品が、現代社会を象徴するアイコンとして人々の記憶に焼き付いている。

[訳]渡辺 滋人(ワタナベ シゲト)
渡辺滋人(わたなべ しげと)
翻訳家。訳書に、ケルテス『読む時間』、ポケットフォト『サラ・ムーン』、『錯視の不思議』『ブライアン・コックスの宇宙への旅』(いずれも創元社)などがある。