大佛次郎が「一代の傑作」と語る、叙情豊かな文章を
朝倉摂がやわらかく、瑞々しいタッチで描き出す。
不朽の名作絵本『スイッチョねこ』をふたたび刊行!

秋の庭から、いろいろな虫の声が聞こえてきます。
子ねこの白吉は、こんなにきれいな声で歌う虫は、きっと美味しいに違いないと考えます。
食べたくて仕方がありません。

白吉は虫をとろうとしますが、失敗をくりかえし、夜が更けていきます。
そのうち、眠くなってきます。大きなあくびをした、その時、口の中に飛び込んできたなにかをまるのみにしてしまいます。
すると、お腹の中から、「スーイッチョ! 」と大きな声が聞こえてきて……。

夏に生まれた子ねこたちが、思わぬ出来事に遭遇しながら、はじめての秋を過ごします。
そんなお話です。

 

朝倉摂(あさくら・せつ 1922-2014) 画家・舞台美術家。
東京都生まれ。彫刻家の父・朝倉文夫の方針により学校へは通わず、自邸に招かれた様々な分野の教師から学ぶ。《働く人》で第三回上村松園賞を受賞。絵本の挿絵に『三月ひなのつき』『ごんぎつね』ほか、多数の作品がある。1972年、『スイッチョねこ』で講談社出版文化賞(絵本部門賞)を受賞。60年代から本格的に取り組んだ舞台美術の仕事は1600を超え、1989年の朝日賞をはじめ、数々の賞を受賞した。

大佛次郎(おさらぎ・じろう 1897-1973) 小説家。
横浜市生まれ。1921年、東京帝国大学法学部を卒業。代表作に『鞍馬天狗』『赤穂浪士』『帰郷』『パリ燃ゆ』など、相次いで珠玉の名作を発表。昭和のはじめごろから少年少女のために「角兵衛獅子」「ゆうれい船」などを発表。愛猫家として知られ、『スイッチョねこ』は、代表的な童話の一つ。1964年に文化勲章を受章。横浜港を見下ろす「港の見える丘公園」内に大佛次郎記念館がある。

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