豊かになってしまったことで失くしてしまったモノ、街に暮らしつづけたことで忘れてしまったモノがある。見えなくなってしまった星に代わって夜空をうずめたネオン星は、手まねきする誘蛾灯のように怪しくきらめき、ビルの谷間に立って黒々と連なるコンクリートの峰々を仰ぎ見れば、なぜか崇高にさえ思えてくる。
繁華街のど真ん中でハイサワーを飲みながら口から火花を吹き、虚ろになったところで心の痛みを忘れさせ、マドンナを夢見る私はチョットため息まじりの東京チカチカ症候群。明日もまた笑ってしまおう、寂しいからでも楽しいからでもないけれど。「東京ってイイ街だナー」なんてつぶやきながら。
でもそんなとき、いつもどこかで風が吹いていて、それがやがて私の頭の中でも─