「季節が訪れても定められた地にたどり着けない渡り鳥がいる。」
この文章に、写真家は自身を重ね合わせているだろうか。
山陰に住んで10年。前作の『留鳥ーRESIDENT BIRDS』から3年。
撮り続けてきたことで眼差しはより遠くより深まり、ページをめくるたび、見ている者に心地よい風を吹かせている。

「この地に住んでちょうど10年になる。前作『留鳥』では、ここを終の住み処と決めて撮った写真を集めた。『迷鳥』は、その後に撮ったものを中心にまとめている。三年近く過ぎて、この地へのときめきと心細さはなだらかなものになった。わずかに強く、遠くをみつめるようになったことが、この本から伝わればと思う。」
― 伊藤昭一(本書あとがきより)