街に溢れる大字報(壁新聞)、読み・語り・歩く大群衆──。毛沢東が待ったをかけた上海コミューン成立(1967年2月5日)、その1週間前という歴史的瞬間を目撃した日本人カメラマンがいた! 半世紀前の人民中国──北京・上海・武漢・広州・深圳にて、文革初期の街の様子と人々のエネルギーを捉えた貴重な写真170点。

【目次紹介】
第1章 街は巨大な掲示板になった
第2章 議論を尽くし,社会と自己を改造する
第3章 ひたすら歩く
第4章 群れる,好奇心
第5章 労働は権利だ
第6章 天の半分
第7章 生活の中の革命

●「半世紀後のあとがき」より
【北京】北京には四日間滞在した。一日目の1月24日は、三角帽子の引きまわしが盛んに行われていた。寒風の中、トラックの先頭に乗せられていた。首から白い板が下げられ、“罪状”が書かれている。顔面蒼白、目は力なく一点を見つめていた。銅鑼や太鼓の音に道行く人も「今度は誰だろうか」と集まってくる。  人民解放軍の兵士を満載したトラックとすれ違った。兵士から三角帽子の「反動分子」に罵声が飛んだ。  この現場は、私が文革を取材した中で、とくに印象に残った一点だった。

●著者紹介
荒牧万佐行(あらまき・まさゆき)
1941年、神奈川県生まれ。日本大学芸術学部写真学科研究室。渡辺義雄日本大学教授に師事。1967年,毎日新聞社入社。東京本社写真部記者、同編集局編集委員などを歴任。現在はフリーの写真家。日本写真家協会会員、日本建築写真家協会会員。一連の文化大革命報道で1967年日本写真協会新人賞受賞。主な写真集に『円覚寺舎利殿』(毎日新聞社)、共著『新・山谷ブルース』(批評社)など。