西陽の反射、水紋、枯れた花、蝶の死骸、人々。
絶えず移ろう数々の実態のない光景は、
夢、または亡霊なのかもしれない。

 

今夏、若手ながら表参道のギャラリー「ROCKET」とオルタナティブスペース「STUDIO STAFF ONLY」での二会場同時開催となる写真展を開催し注目を浴びた新進の写真家・濵本奏による初の写真集「midday ghost」を出版します。本作は 同タイトルで発表された新作と過去作品をまとめた作品集となります。繊細な記憶、心情を写し出したかのようなポートレートやランドスケープ。全ての被写体は日常の風景でありながら、非現実で白昼夢のような作品群で構成されています。壊れたカメラを使用した撮影方法やミクストメディア作品の発表など写真の枠だけにとどまらない濵本の作家としての卓越した視点を楽しめる内容となっています。ブックデザインは数々の写真集や雑誌のデザインを手がける藤田裕美。出版は今回が第一弾となる「人」と向き合い「場」を作る出版レーベル「hito press」からリリースされます。ぜひご覧ください。

この写真集を手に取った人が写真集を見ている間自分のいる環境を一瞬忘れてしまうような写真集にしたい。」とお伝えしました。写真集の288ページの中には白紙が多くあります。白紙を一枚一枚めくるうちに、身体を置いてけぼりにしているような没入感を味わってほしい、という意図があります。白紙の部分の前後には、より抽象的な写真を、白紙の途中では、じわじわと浮かび上がるよう、ポートレート写真を配置していただきました。この白紙の存在により、写真集にも展示空間のような奥行きを生み出せることを知りました。写真集の制作は、さまざまな工程がありました。そのすべてが新鮮で毎日感動しっぱなしでした。藤田さんが組んでくださったデザインをもとに、写真一枚一枚を一緒に確認し、何度も配置を組み替えました。めくっていて気持ちの良い、軽やかな写真集になったと思います。本は、世界中どんなところへでも、私が行けないところへも、旅立つことができます。シワや折れ、日焼けなどの傷みも本ならではです。この写真集を持つ人によって写真の表情が変化することを想像するととてもわくわくします。
——濵本奏