コロナ禍、五輪、選挙…首都を覆う非常事態。写真家は故郷東京の変貌を撮り続けた。都市とそこに生きる人々を切取る時代の記録。

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マスクと自粛に覆われ、
「匿名化」していく街と人。
写真家・初沢亜利はパンデミックの中、
東京を彷徨い撮影を続けた。

北朝鮮、被災地東北、沖縄への撮影の旅から
帰還した彼の目が捉えたのは、
巨大な権力都市の姿、
そして右往左往する我々の「自画像」だった――。

史上稀な危機下で営まれる
東京の日常、人間模様。
次世代に残すべき全168カット。

<後記「東京の自画像」より抜粋>
2010年からおよそ10年、
北朝鮮、被災地東北、沖縄と廻り
4冊の写真集を制作した。
東京から見渡した際の
周縁をめぐる長い旅のようだった。
その過程で見返す東京という土地は、
巨大な権力都市に見えた。
東京目線の権力性は、
自身の眼差しそのものではないかと
自戒する年月でもあった。
長旅を終えた私が次に撮るべきは、
幼少期より居住し、今なお拠点とし、
半ば同一化している東京ではないか。
しかし、そこには自身の内面を覗き込むような
不快さがあり、気が重かった。(略)

2016年から2018年にかけて、
政権が移行した北朝鮮の変化を写した。
2019年後半は
民主化運動に沸く香港も3度撮影した。(略)

居住地をスナップするためには、
日常的にカメラを持ち歩き
写真脳を常にオンにしておく必要がある。
2019年末からウォーミングアップ期間に入り、
年始から意識的に都内を徘徊した。
心身ともに街へのアンテナを張る体勢が整った頃、
コロナ禍に突入してしまった。
2020年は56年振りに
オリンピックイヤーを迎えるはずだった。
1964年のような
高度成長期の高揚感はないものの、
インバウンドに拍車がかかり、
観光産業をバネに日本経済再浮上を夢想した
日本人は少なくないだろう。
春になれば、オリンピックへの
カウントダウンをメディアが煽りまくり、
国民はいつしか
漠然とした高揚感に包まれたことだろう。
空気のように押し流される群衆心理に逆らえず、
オリンピックを喜ばなければ
非国民であるかのような同調圧力も
生じたかもしれない。
オリンピック開催により
東京がどう脚色されるか。
様々な日本人像も垣間見られる
この機会にタイミングを合わせ、
撮影を開始したはずだった。(以下、略)

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初沢亜利
1973年、フランス・パリ生まれ。上智大学文学部社会学科卒業。第13期写真ワークショップ・コルプス修了後、イイノ広尾スタジオを経て写真家としての活動を開始する。東川賞新人作家賞、日本写真協会新人賞、さがみはら賞新人奨励賞受賞。写真集に『Baghdad2003』(碧天舎)、『隣人。38度線の北』『隣人、それから。38度線の北』(共に徳間書店)、『True Feelings 爪痕の真情』(三栄書房)、『沖縄のことを教えてください』(赤々舎)、『東京、コロナ禍。』(柏書房)。

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