浅田政志の父「章」を4年に渡って撮りおろした作品は、「遺影」のために始められた。実家のリビングで、父と息子が二人きりで向き合い、シャッター音だけが流れると言う。遺影の撮り方を模索してさまざまなアレンジも試みたものの、撮り方や企画にはおわらないものが、本書には流れている。 日めくりのように時系列で並べられた120点の写真のなかで、息子の「どう撮るか」という意図や、父の「どう撮られるか」というためらいは次第に変化していき、カメラを通して向き合う二人の関係や息づかいが自然な表情に現れているようだ。

「遺影」という生死を超えて長く残る一枚の写真。「千年も万年も」という人の願いの儚さと切実さの、ひとつの結晶とも言えるだろう。 空想の「浅田撮影局二代目局長」という立場でそれを模索すると同時に、巡る命を受け継ぐ息子として父を撮る一枚でもある。異色の「遺影写真集」は、関係性を映し出し、生と死に深く関わる写真を探る、浅田政志の新境地である。

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