装飾 = デコレーションを施されたトラック、通称デコトラ。日々の生活に欠かせないものたちを運ぶトラックを、豊かな発想とたしかな技術でもって飾り込むドライバーたち。飾りそのものが彼らの生き様でもあった。

写真家・田附勝は、2007年にデコトラを撮影したシリーズ「DECOTORA」でデビューを果たした。それ以降、デコトラそのものを撮影することはほとんどなく、デコトラで始まった縁を辿って、東北各地や縄文土器などの撮影をしてきた。 青森県八戸は、デコトラ発祥の土地と言われ(起源については諸説ある)、田附が「魚人」を撮影した場所でもある。今回、デコトラで写真家としてのキャリアをスタートした田附は、八戸市美術館のリニューアルオープンの展覧会に向けて再度デコトラを撮影することになった。

写真家としてのキャリア開始から約14年の時を経て、世の中の状況は変わり、デコトラの装飾も大きく変わってきた。しかしながら、トラックを装飾することが運転手たちの生き様であることは変わらない。またドライバーたちの存在が私たちの日常生活を支えていることは、これからも変わることはないだろう。

田附はデコトラを通して、私たちが見過ごしている多くの物事、そしてこの社会そのものを見続けてきたのだ。「DECOTORA Hachinohe」は、2007年に発表した「DECOTORA」とは撮影方法やドライバーたちとの距離感も違う。ただ、田附が見ているものは変わらない。
本書では12点の写真と、今までデコトラについて書いてこなかった田附によるエッセイ「飾りの生き様」を収載している。

 

田附 勝(たつき まさる)
1974年、富山県生まれ。1995年よりフリーランスとして活動をはじめる。
2007年、デコトラとドライバーのポートレートを約9年にわたり撮影した写真集
『DECOTORA』(リトルモア)を刊行。2006年より東北地方に通い、東北の人・文化・自然と深く交わりながら撮影を続ける。2011年、写真集『東北』(リトルモア)を刊行、同作で第37回木村伊兵衛写真賞を受賞。
その他の著作に、写真集『その血はまだ赤いのか』(SLANT/2012年)、『KURAGARI』(SUPER BOOKS/2013年)、『「おわり。」』(SUPER BOOKS/2014年)、『魚人』(T&M Projects/2015年)、縄文土器の欠片を撮影した『KAKERA』(T&M Projects/2020年)がある。