ジュエリー作家・本多沙映による初作品集『EVERYBODY NEEDS A ROCK』に収めてられいるのは、すべて本多の手に寄って作られた人工石たち。「アカホシ」や「バライチゴ」と名付けられた人工石の素材となるのは、道端で拾ったプラスチックごみ。ごみを溶かし合わせ、磨くことで、鮮やかで美さを携えた唯一無二のローカルな人工石が生まれるのです。

この活動は、ハワイのカミロビーチで発見されたプラスチックの欠片を含んだ新種の石からインスピレーションを得て始まりました。その新種の石は分解されることなく、永遠に地表に残ると言われ、人類の時を刻んできた証となるかもしれないと考えられています。遠い未来で、この石が人々からダイヤモンドやルビーのような貴重な鉱物として扱われるかもしれない。そんな想像を着想として、今日の記憶を含有する石たちが、制作にまつわるストーリーともに一冊にまとめられています。

石に秘められた神秘はいつの時代も人を惹きつけます。それがたとえプラスチックのごみから出来ていても、その美しさに魅了されるでしょう。本作は現代の環境問題を起点としながらも、石が持つ記憶をあらわにし、また見捨てられたものから石を生成することで新しい価値を提示します。

ダイヤモンドが単なる地球形成における地下底活動の産物であるように、
私の石は現代文化が生み出した堆積物である。
プラスチックごみのような見過ごされたものを大事に
扱い祝福することで、そこに新しい価値を生み出し、
日常の何気ない風景を違う角度から見る視点を提案する。
(本文より)