手仕事の喜びを奪った機械の象徴〈ミシン〉を駆使し
人間が〈永遠〉に繰り広げる〈矛盾〉を鑑賞者の胸にチクリと刺繍する

青山悟(1973~)は、産業革命の象徴、手仕事の喪失、ジェンダー観など、多言語をもつ“ミシン”を用いて、世の中の様々な問題や矛盾を、風刺とユーモア溢れる作品にあらわしている。その創作の原点は、ロンドンのゴールドスミスカレッジのテキスタイルアート科、生徒の9割が女性という環境下で、アートと、テキスタイルの背景にある労働問題やフェミニズムに触れた学生時代にある。AIが人にとって代わろうとし、テクノロジーの台頭が著しい今日において、青山の世界は見る者に静かながら深い示唆を伝えるだろう。本書は、初期から最新作まで20年にわたる制作活動から約150点を厳選、作家解説を付した初の作品集である。

青山悟(あおやま・さとる)
1973年東京生まれ。1998年ロンドン・ゴールドスミスカレッジのテキスタイル学科を卒業、2001年シカゴ美術館附属美術大学で美術学修士号取得。祖父は二科会員の画家で、幼い頃から美術に触れる環境で育つ。1940年代の工業用ミシンを通して、変容し続ける人間性や労働の価値を問う作品を数々発表。近年はアートセミナーや学生向けワークショップを開催するなど、積極的に活動の幅を広げている。

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