アーティストブックやZINEの制作者,出版社などが集まり,訪れる人たちと本を介し文化や知識の交換をしながら出版物を販売するイベントであるアートブックフェア。アートブックフェアの特徴は,アーティストや周辺のコミュニティの活動を支援することを目的とした公共性の高さだ。しかし,ここ数年は世界的なパンデミックの影響により,多くのフェアが開催中止やオンラインへの移行を決断したり,ロジスティクスの問題も発生するなどさまざまな課題を抱えることになった。また,オンライン開催により出展者・来場者ともに海外のフェアへのアクセスは良くなったものの,対面でのコミュニケーションへの揺り戻しや,大規模になりすぎたフェアに対しての疑問も少なからず生まれているだろう。

そこで本特集では,本というメディアから流通/コミュニケーションの意味や方法について考えてみるため,近年新たに始まったアートブックフェアや,欧米のアートブックフェアを参照しつつ独自のコミュニティづくりを目指すアジア各国のフェアなど7つのアートブックフェアに注目。フェアの運営団体に,コロナ禍での開催状況や,フェア出展者の出版物から推薦タイトルを紹介してもらった。さらに,各国のフェアに参加経験をもつ出版関係者たちによる寄稿・インタビューを通じ,アートブックフェアの今日的な役割や,アートブックの流通や保存についての考察も試みている。

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