【通巻400号・創刊70周年記念特大号】
過去399号分の表紙デザインを特別収録した完全保存版!
特別付録「ニューカレンダー」付の特大号。

収集保管する資料や作品の情報を記録し体系化することで、過去の資料を未来の創造へと活用していこうとするアーカイヴ化の活動は、これまで日本全国の美術館・博物館や大学図書館等を中心に進められてきた。2000年代以降のデジタル化の波やメディアアートの台頭により文化・芸術分野におけるアーカイヴへの関心が高まるなかで、近年ではアーカイヴのデジタル化に取り組む企業や団体等も登場し、より創造的なデータベースの構築・運用の方法が議論されはじめている。

一方で、グラフィックデザインに関しては、欧米の美術館・博物館等を中心にポスターのコレクションやモダンデザイン黎明期を支えたデザイナー、作家たちの個人アーカイヴが存在するものの、国内の先行事例は少なく、デザインミュージアムやデザインアーカイヴを巡る状況についても、多くの場合、収集保管された資源が公的にアクセス可能な状態までには整備されていない。仮にアーカイヴの本質を利活用可能な知の蓄積と捉えるならば、日本のデザインアーカイヴの多くはアーカイヴとして理想的な状態に至っておらず、アクセシビリティの向上は大きな課題であるだろう。より開かれたアーカイヴの実現は、デザイン史研究や批評活動など、デザインの歴史化・体系化の土壌を育み、そこから新たな創作活動が芽吹くことにもつながる。ひいては、収集保管された資源についての理解を深めるという知の循環を生むはずだ。

そうした見通しのもとに、本特集では、進行形の事例をふくめた国内のグラフィックデザイン関連のアーカイヴを紹介していく。ポスターアーカイヴ、個人デザイナーのアーカイヴ、展覧会告知物のアーカイヴ、日本語活字関連資料のアーカイヴなど、それぞれ資料の性格や規模は異なるが、実際にアーカイヴ化の実務に携わる人々の声を通じて、デザインの保存記録を身近な問題として捉え直す機会としてほしい。また、特集の後半部分には、アーカイヴをより広義に捉えるための寄稿、インタビューが続く。歴史研究の分野で活用される国内外のアーカイヴ事情や、情報化社会におけるアーカイヴ/アーカイヴ的なものの捉え方、紙媒体のアーカイヴとしての価値など、今後の議論につながるトピックを収録した。それらのコンテンツをつなぐページには、小誌創刊号から399号までの表紙デザインも掲載している。アーカイヴについて考察する企画であるのと同時に、『アイデア』自身をアーカイヴする特集としても楽しんでいただきたい。

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