戦後80年、いまあらためてキャパの写真証言を見直すことの意義

20世紀が生んだ偉大な写真家のひとり、ロバート・キャパ。「カメラの詩人」と言われ、またすぐれた「時代の証言者」でもあります。その写真の背景には苦闘するヒューマニストの眼があります。戦争の苦しみをとらえるとき、そこにキャパの人間としてのやさしさ、ユーモアがあります。キャパは人間を取り捲く状況を少しでもよいものにしようという強い信念と情熱をもって状況に身を投じましたが、それだけでなく写真のもつ衝撃力を見分ける確かな眼を持ち合わせていました。

1930年代ヨーロッパの政治的混乱、スペイン内戦でドイツ・イタリアのファシスト政権に支援されたフランコ将軍の反乱軍によって次第に圧倒されて敗北する共和国政府軍、日本軍による中国の漢口爆撃、第二次世界大戦で連合軍の対ドイツ反攻作戦の始まる北アフリカから、イタリア戦線、ノルマンディー上陸作戦などの戦闘現場に立会い、命がけの取材写真は眼に見える確かな記録として報道されました。それらの多くは時空を越えて、後世の人びとにも訴えかける強いメッセージとなっています。

本書では数々の傑作から、“戦争”に焦点を当てた作品を厳選しました。昨今のロシアとウクライナ、パレスチナやレバノンとイスラエル等の地域における紛争、シリアのアサド政権崩壊による影響など、世界の現状は、残念ながらキャパの願った「人間を取り捲く状況を少しでもよいものにしよう」という思いとはほど遠いものです。それ故に戦後80年のいま、あらためてキャパの写真証言を見直すことの意義があります。

【構成】

  1. ジャーナリストを目指す
  2. スペイン内戦
  3. 日中戦争
  4. 第二次世界大戦ー戦時下のイギリス
  5. 第二次世界大戦ー北アフリカ
  6. 第二次世界大戦ーイタリア上陸
  7. 第二次世界大戦ーノルマンディー上陸
  8. 第二次世界大戦ーパリ解放
  9. 第二次世界大戦ードイツ降伏
  10. イスラエル建国
  11. 終焉の地 ― インドシナ半島

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