日本現代美術における絵画の展開を知るうえで欠くことのできない画家・𠮷本作次の独自の「道行き」をたどる。

1980年代、空間を演出するインスタレーションという展示形式が隆盛していくなかで絵画の復権を強く印象づけた国際的な動向、ニュー・ペインティング(新表現主義)の流れに乗って鮮烈なデビューを果たした𠮷本作次(1959年~)。うねりを伴う力強いストロークと重厚な質感、それとは対照的なグラフィカルなイメージや浮遊するような形態が展開する大画面の作品で注目を集めました。90年代以降は新たな表現の模索のためドローイングを繰り返し、中国絵画の筆法から「線」の要素を取り入れ、またルネサンス以降のヨーロッパ絵画の主題と構図に着目、静けさとダイナミズムを併せ持つ表現と寓話的画題へ変貌を遂げました。2005年からは名古屋芸術大学教授を務め、理論と実技指導の両面から後進の育成にあたっています。

本書では初期から現在まで100点を超える作品図版と、𠮷本によるエッセイや作品解説、竹葉丈(名古屋市美術館)、山脇一夫(美術評論家)の論考によって1980年代以降の日本の現代美術における絵画の展開を知るうえでも欠くことのできない存在である𠮷本の独自の「道行き」を紹介します。

 

𠮷本作次(よしもと・さくじ)
1959年岐阜県出身、名古屋芸術大学卒業。1980年代に力強い筆触と重厚な質感、グラフィカルなイメージや浮遊するような形態が展開する大画面の作品で一躍注目を浴びる。模索の時期を経て、ルネサンス以降のヨーロッパおよび中国の絵画から主題や構図、筆法などを貪欲に学び、現在も新たな表現を探究し続けている。名古屋芸術大学教授。

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