科学は、真理にたどり着くために、「問い」を証明する実験を繰り返す。
伊藤之一は、実験を繰り返し写しながら、「見ることをめぐる問い」を投げかける。

明治に始まる約140年の歴史の中で、日本の産業と社会に貢献する世界レベルの研究開発を続ける国立研究開発法人産業技術総合研究所。通称、産総研。その研究領域は、エネルギー環境、生命工学、情報人間工学、材料科学、エレクトロニクス製造、地質調査、計量標準と多様な7領域に渡る。
伊藤之一と産総研の出会いは、2019年5月、130年振りに「キログラム」の定義改定という科学史に刻まれる大きな出来事の撮影が依頼されたことに始まる。その伊藤の写真は、「固定概念から解放された」と研究者たちに新鮮な驚きを与え、以降、通常非公開の研究室での撮影を許されることになった。
本書は、科学の真理を追究する現場に、3年間写真という目で並走することで掴みあげた「見ることをめぐる問い」の記録である。

日本の産業を支える7つの多様な研究領域
国立研究開発法人 産業技術総合研究所に取材

【計量標準総合センター】キログラム原器 積分球 光学トンネル
【生命工学領域】脊索動物ホヤ ゲノム配列
【エネルギー・環境領域】エンジンダイナモメータ制御盤

 メタンハイドレート 大空間実験室
【情報・人間工学領域】人間型ロボットHRP-5P
【地質調査総合センター】薄片作製室 ハスクレイ
【材料・科学領域】カーボンナノチュー
【エレクトロニクス・製造領域】クリーンルーム

伊藤之一(いとう・かずゆき)
1966年、愛知県生まれ。1991年、日本大学芸術学部写真学科卒業後、博報堂フォトクリエイティブ(現、博報堂プロダクツ)に入社。2000年、伊藤写真事務所設立。2015~2019年、多摩美術大学美術学部統合デザイン学科非常勤講師。広告写真とともに、自主作品を写真集という形で発表を続ける。
主な写真集に、「入り口」(2003年、WALL刊)、「雨が、アスファルト(2009年、WALL刊)「テツオ」(2016年、日本カメラ社)、「under glass」(2016年、ITO PHOTO OFFICE)、「Light of the Ring」(2019年、青幻舎)がある。

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