終わりのない路上の旅に出るきっかけとなった始まりの場所。
大阪にはたったの二年間しか住んではいませんでしたが、あの頃のネガの束を掴むと郷愁のような想いになります。
大阪を離れる前にプリントしたものは不幸があって失われてしまい、しばらく見返すことはありませんでした。
暗室の棚の隅からずうっと小さな声が聞こえていたけれど、ようやく向き合えたような気がします。
眼前に飛び込むものをできる限り零さないように闇雲にシャッターを切っていたあの頃のベタ焼きから、当時は見つけられなかった写真をプリントして、こうしてまた新しい世界に出会えることが今はとても楽しいです。

写真冊子「VACUUM」は3年目を迎え12号となりました。
僕はなかなか顔を出せていないけど、3ヶ月に1回の次号の編集日に事務所に行くと、それぞれの写真を広げて交代に写真を眺めて、ああだのこうだの言いながら作っていく時間が本当に楽しくてわくわくします。
そして次号からは新たなメンバーも加わります。次もまた違った本になる。VACUUMという本が意図なく変化して、僕の知らない街の一辺に僕自身も含まれている不思議な感覚にいつも刺激を受けています。

この場を借りて、毎号手製本で作業をしてくれているメンバーの皆さんいつもありがとうございます。

2024年もVACUUMをどうぞよろしくお願い致します。

鈴木拓也

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