LUMIÈRE——光
コロナ禍を契機に生まれた10年ぶりとなる待望の新作、2タイトル同時刊行
2020年初頭、世界中で爆発的な感染を引き起こした新型コロナウイルスによって、人類は他者との接触を極端に減らし、自宅などの限られた空間に閉じこもることを余儀なくされました。写真とともに生きてきた瀧本幹也も、通常大人数で行われるCM撮影や広告などの仕事が軒並みストップしてしまったことはもちろん、世界各地に飛び、大型の機材を使って撮影するようなこれまでの作品づくりはできなくなりました。

そんなとき、瀧本は偶然出会った河原に咲き乱れる小さな菜の花に、これまで撮影してきた人の住めない辺境の地に見る、惑星としての地球の力強い生命力と同じ自然の力を感じ、野の草花の撮影を始めました。連綿と続く命の瞬間を身近な草花に見出し、その内部に息づく「小宇宙」を3年かけて探求、LUMIÈRE(フランス語で“光”)シリーズとして完成しました。

また2020年秋、京都で国際写真祭に参加した瀧本は、「円融」(仏語。すべての事物が完全に溶け合い、互いに妨げないこと)を知り、静けさに満ちた寺院の建築や庭と向き合いました。そこで数百年、数千年前から現在に続く時間の流れに 自らも連なっていることを感じ、さまざまな寺院を歩いてめぐり、撮影したPRIÈRE(フランス語で“祈り” )シリーズをまとめました。

写真集にまとめるにあたり、用紙や印刷にも徹底的にこだわりました。本文用紙には印刷適性と紙の風合いという相反する性質を両立させる高級印刷用紙のヴァンヌーボを全ページにわたり使用し、表紙は布張りに題簽貼り、箔押しを施しています。一般的な4色にグロスニスを加え、5色で印刷することによって作品の色合いを可能な限り再現しました。

生命の循環や、生きものと地球という惑星との共存に思いを馳せる、瀧本幹也にとって約10年ぶりの新作写真集です。

寄稿:森田真生(独立研究者)

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