Transboundary Design - Perspective of Yoshihisa Tanaka

本特集ではデザイナー,田中義久の活動を特集する。1980年生まれの田中は,インディペンデントな出版社やギャラリーの写真集,アートブックのデザインをはじめ,さまざまな企業,イベント,プロジェクトのアートディレクションを行い,そのほとんどに企画構想や運営のレベルからかかわっている。田中のように受注制作を越えた自主的「生産」を行うデザイナーのあり方は,2000年代以降欧米を中心に見られる世界潮流のひとつであり,出版やアートのような文化領域周辺において顕著だ。そうした潮流はデザインが専門的職種から人の生そのものを規定する概念へと拡張されていく時代のなかで,人と世界の間をあらためてとりもとうとするデザイナーの精神運動とでもいうべきものだ。田中はいちはやくそのような考え方を自覚し,日本において独自の実践を展開していったデザイナーのひとりだろう。

特集の構成は個人をテーマとする点で従来のようなデザイナー作品集的な形式をとっているが,その目的はそれぞれの実践の背景にある思想や文脈を通じて現在のデザインの可能性を批評的に捉えることにある。そこで,先行世代や同世代のデザイナーのコメントや協働する編集者の論考など複合的な視点を通じ,田中義久の実践に潜む構造の一端が明らかになる。その構造は,今後のデザイナーにとって重要なロールモデルとして参照されていくだろう。

田中義久(たなか・よしひさ)

1980年,静岡県浜松市生まれ。武蔵野美術大学空間演出デザイン科卒業。東京都写真美術館をはじめ,コマーシャルギャラリーのVI計画,「POST」,「The Tokyo Art Book Fair」,「Daiknyama Photo Fair」,「CASE」などのアートディレクションを手がける。また,アーティストの作品集デザインも定期的に継続している。飯田竜太(彫刻家)とのアーティストデュオ「Nerhol」としても活動中。http://nerhol.com/

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