文字の色,絵や写真を構成する線や面の色,紙やインキの色など,色はグラフィックデザインにとって欠かせない要素のひとつだ。しかし,デジタルソフトを使えば専門的な知識を要さず繊細な色彩表現や配色の組み合わせを実現できるようになった現代にあって,グラフィックデザイナーたちは色についてどんな意識をもっているのだろうか。本特集はそうした疑問を出発点に,7名のグラフィックデザイナーに自身の色彩感覚が表われた制作物を紹介する誌面の作成を依頼し,彼・彼女らの色彩の実践に迫っていく。また,後半では,色のしくみや色彩論,色の規格化などにまつわる解説や寄稿,インタビューを通じて,身の回りの色彩により意識を向けるための視点や,色彩との新たな関わりかたについて考えを深めていくような構成とした。

近年では,デジタル環境の進化によりRGBの色彩世界のみで完結するデザイン表現も増え,従来的な色彩論や色彩学の知識はグラフィックデザイナーにとって必須のものではなくなった。しかし,手法としての色彩ではなく,色やそれをめぐる思想に触れてみることにも意義があるのではないだろうか。現代の様相を反映するデザイナーたちの実践や企業の取り組みとともに収録した解説や論考からも,色彩表現を探究するためのヒントが得られるだろう。時代に合った色彩世界を実現していくために,色彩について学び考える機会としたい。

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