光を美しく描き、降り積もる雪の音が聞こえてくるような風景画
日本画家・奥村厚一の代表作やスケッチなど約150点を収録

2024(令和6)年に生誕120年、没後50年を迎える日本画家・奥村厚一。

明治の終わり、京都に生まれた奥村は、京都市立絵画専門学校研究科へ進学。日本画家・西村五雲に師事しました。1929(昭和4)年の第10回帝展に《山村》が初入選。官展を中心に活動し、精緻な筆致で鋭く季節を捉えた風景表現を用いて、雪に覆われ、立ち並ぶ木々を清澄な空気の下に描いた《浄晨》が高評価を獲得。戦後最初の日展にて特選を受賞しました。

しかし、1948(昭和23)年に山本丘人、上村松篁、秋野不矩らとともに創造美術(現・創画会)を結成すると、それまでの繊細な描線から、太い輪郭線や面として大きく対象を捉えた風景表現を追求するように。さらに描く対象を大写しにして、大胆に抽象化。激しい波や雲などの自然現象や木々の生命感を強調する作品も生み出しました。

本書では、奥村の初期から晩年までの作品を振り返る約65点を収録。日本や世界を旅して描いたスケッチ約100点も収めました。自然の中に身を置き、風景と直接向き合って描いた臨場感と、奥村の卓抜した構図と手堅い写生を感じていただけるでしょう。そのほか、ポストカードや雑誌の表紙を飾った作品など、さまざまな画業についても紹介しています。加えて、新聞などに絵とともに文章を寄せることもあった奥村の「言葉」も掲載。自然をどのように感じ、どのように描いたのかをうかがい知ることができます。

 

奥村厚一(おくむら・こういち)
1904(明治37)年-1974(昭和49)年
京都市に生まれる。京都市立絵画専門学校研究科へ進学すると同時に、西村五雲に師事。1929(昭和4)年、第10回帝展に初入選して以来、官展を中心に精緻な筆致に鋭く季節を捉えた風景表現を発表する。1946(昭和21)年、雪に覆われ立ち並ぶ木々を清澄な空気の下に描いた《浄晨》で特選を受賞した。1948(昭和23)年には「創造美術」結成に参加し、新しい日本画を創造する活動に身を投ずる。自らの制作を厳しく問い直す中で、それまでの繊細な描線から、太い輪郭線を用い、描く対象を大胆に抽象化する作風に移行する。晩年には風景に肉薄し、木々の生命感を強調する作風を展開した。「山の画家」と呼ばれ、自ら山に分け入って描いたスケッチも高く評価されている。京都市立芸術大学名誉教授および嵯峨芸術短期大学教授。

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