遺棄された爆撃機や船舶と自然との「衝突」。
未来を問いかける、杉山有希子。圧倒的デビュー作

広く注目される写真家・杉山有希子の待望の初写真集。
2017年以降、「CRASH」と題して、自然の中に遺棄された人工物の光景を撮影してきた。ロサンゼルス郊外の砂漠に打ち捨てられた爆撃機、鞍馬山山中で崩壊していくクラシックカー、ニューヨークの船の墓場ー。杉山は近赤外線カメラを用いることで植物を白く写し出し、朽ちてゆく人工物と自然の生命との対比を浮かび上がらせている。社会の近代化の過程で消滅していくと思われていた自然が、人工物を侵食し、そのサイクルに埋もれさせる新たな関係。SF的、ディストピア的な世界に残り続ける人工物は、どこか人間の顔や身体の面影を宿す。

もう一つのシリーズ「PHASES」は、人類の宇宙空間への挑戦を記録したシリーズ。最初期のソ連の宇宙服や実験用のマネキン。スペースシャトルの後継機となるはずだったスペースクラフト。大事故により秘匿されたNASAラボラトリーの風景など、ノスタルジックな未来像と現在進行形の物質的リアリティが衝突し、新たなイメージを創出している。

「CRASH / PHASES」は、人間中心主義の終焉と「次の世界」につながる光景を提示する、未来へのランドスケープである。

杉山 有希子(すぎやま・ゆきこ)
1985年京都市生まれ。2011年に金沢美術工芸大学の彫刻専攻 (菅木志雄ゼミ) 修士課程を修了。彫刻家として活動の傍ら、2017年から写真を始めロサンゼルスへ渡米。翌年の2018年、国際的な写真芸術祭 KYOTOGRAPHIE KG+Award 2018 に出展。2021年1月、BS「フジブレイク前夜~次世代の芸術家たち~」に出演。幻のスペースクラフトX34の再生プロジェクトを始動。2022年4月、“The Arctic Circle 2022"の北極圏レジデンスプログラムにサイエンティストと共同参加予定。主な個展に「CRASH 2021」(ロイドワークスギャラリー、東京)など。

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