人間精神の解放と自由を求めて。
シュルレアリスムは終わらない——!

今から100年前の1924年、アンドレ・ブルトンが「シュルレアリスム宣言」を発表し、20世紀の文化にもっとも幅広く影響を及ぼした芸術運動「シュルレアリスム」が創始されました。日本では、1920年代後半に知られ始め、若者たちを中心に翻訳や詩の実践が行われ、絵画の領域では古賀春江、福沢一郎といった画家が、不可思議で超現実的イメージを日本の画壇に導入して注目されました。30年代には東京のみならず、京都、名古屋、福岡など地方都心にも波及していきます。
本来的に人間精神の解放と自由を求めたシュルレアリスムは、やがて第二次世界大戦に直面し、軍国主義下の日本において検閲や弾圧の対象となり、福沢一郎や瀧口修造の検挙・勾留、そして表現の自粛を迫られることになります——。また激化する戦況の中、多くの画家たちの若い命が失われました。
本書では、最盛期を迎えようとする矢先に収束させられた「日本のシュルレアリスム運動」を戦前・戦中・戦後を通して、芸術家たち約90名の絵画を中心に紹介します。戦前においては、現存作品がない、あるいは本書に挙げる数点しか確認できない画家も少なくありませんが、なるべく多くの画家の作品を取り上げて、昨今、次第に明らかになってきたシュルレアリスムの全体像に迫ります。

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