本書は、写真家三好耕三が1972年から1983年にアメリカに滞在し撮影したシリーズ「See Saw」や「Conservatory 温室」など現在に至る写真群から、写真家上田義彦が69点をセレクトした写真集です。

頭の中にあるイメージに誘われるように旅を続ける中で撮影されてきた作品は、旅するまなざしにありがちな非日常的な浮つきを見せることなく、いつも礼儀正しく、訪れた土地の日常の時間を尊重し、それに寄り添うように撮影されています。結果として、写真の中には、サボテンや桜、その地に生きる人々など被写体の側に流れる、その土地に根ざした日常の時間が湛えられています。三好がレンズを向けるその先の被写体は、それらの物の表面の質感を浮かび上がらせることで、触れられそうなほどの存在感をもち、自らの定めを悟っているかのように飄々とした表情で静かに佇んでいます。

写真家の原点に迫る作品を収めたこの一冊は、三好耕三にとって初めての普及版写真集でもあります。

三好耕三
1947 年生まれ。
日本大学芸術学部写真学科卒業。
1986 年日本写真協会新人賞受賞。
1991年より文化庁芸術家在外研修員として、アリゾナ大学センター・フォー・クリエイティヴ・フォトグラフィーで1年間研修後、引き続きアリゾナ州に滞在。
1996年に帰国し、現在は東京を拠点に制作活動を続けている。
作品は、東京国立近代美術館、東京都写真美術館、ヒューストン美術館などに収蔵されている。