兵庫の但馬地方、新潟の松之山町を中心に、九州は長崎から東北の山形まで、水田風景を探し求めた20年の集成。雲間の光が田んぼを照らし、霧が早苗を包み込む。海を臨む棚田が、一枚一枚、雲を映し出す。十段前後の高さに組まれた稲架(はぜ)に、豊かな稲穂が掛けられる。

一面の雪に覆われた田を、動物の足跡が行く。 人々の手が作り上げ、受け継がれていく水田も、減少の一途を辿りつつある。現代の社会が抱える問題を反映して、消えゆく水田の景観はある。大型カメラを据え付けた三脚を担いで、田んぼとそこに生きる人々との出会いを静かに写し出した一冊。

前田春人(まえだ はると)
1963 年、兵庫県生まれ。 写真家・樋口健二氏よりフォト・ドキュメンタリーの基礎を学ぶ。 1992 年、ジョハネスバーグに滞在し、新生南アフリカが誕生するまでの 激動した時代に生きる民衆の姿を撮影。写真展、雑誌等で発表。 1998 年、日本各地を旅しながら、山里に残る田んぼの撮影を始める。 2003 年、写真集『Quiet Life』(青幻舎)で、日本写真協会新人賞を受賞。

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