“schoolgirl complex”は、写真家・青山裕企が2006年から制作を続けている作品です。

この作品は思春期の頃に、同級生の女子たちに対して、眼を見るのはもちろんのこと、面と向かって話すことすらできず、今となっては彼女たちの顔も思い出せないほどだという青山が、原体験から生じた妄想を巡らせ、青山にとっての“schoolgirl”たちに対する“complex”をテーマに撮影が始まりました。

透けるシャツ、ソックス、チェックのスカートからのびる足、膝裏、ほくろ、かさぶたなど、画一的な制服を身にまとっていても、女子学生たちの個性の痕跡はたしかに存在している――。
思春期の頃の青山はそれらに対して強い妄想と欲望を抱くと同時に、女性に対して強い恐怖心(コンプレックス)があったといいます。そんな複雑な感情、妄想、欲望を、徹底的に洗練された形で表現し記号化することを目指して、“schoolgirl complex”の基本の表現が生まれました。

シリーズは全部で15を数え、撮影を重ねるごとに青山の妄想は加速していきます。
過ぎ去った思春期を必死に思い出して“package”しようと、緩衝剤やビニールで女子学生を包んでみたり。
学校という閉鎖された空間から離れて、その対極にあるような「世界の終わり」を想像させる荒涼とした地を舞台にした“女の子同士の謎めいた関係性”を撮影するため、アイスランドロケを敢行したり……。
果ては「制服を脱いだら、その記号性の内側には何が存在しているのか」という本能的かつ欲望的な関心から、“制服とともに記号性も脱ぎ捨てた女子学生”というシリーズも生まれました。とうとう“schoolgirl”という縛りすらなくなってしまったのです。

15年間に及ぶ撮影の中で、撮影対象が“青山と女の子の距離感”から“女の子同士の関係性”に移り、さらに女の子たちの記号性ではなく個性にも焦点を当てるように変化していきました。その結果、記号性の象徴でもあった「顔を写さない」というルールも取り払われました。

関心の対象の変化と共に青山自身のコンプレックスは次第に解消されていき、本書で15年分の“schoolgirl complex”の全貌(A to Z)をまとめることで、妄想を巡らせ、加速させてきた旅はいったん一区切りとなります。

物語は終焉を迎えるのか、新たな妄想の扉が開くのか――。
これからも妄想の世界の“schoolgirl”から目が離せません。

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