自然と人間の関係性から世界を探求し続ける作家が、時間と空間のパラレル構造を写真で捉えた作品シリーズ

本書は写真家の山内悠が5年をかけ、モンゴル全土、中国の内モンゴル自治区を巡った旅の記録である。
遊牧民の暮らしに興味を持った山内が自然と人間が調和する世界を求めて始めた旅だったが、終えると写真には大きく分けて4つの光景が現れていた。
数万光年の無数の星の光が注がれる地球の創生を思わせる大地。
自然と共存し昔から変わらない遊牧民と動物たちの楽園のような光景。
経済活動を基準とした現代社会の街のスナップ。
そして、旅の最後に訪れたSF世界で描かれる近未来のような砂漠の風景。
これらはまるで、あたかも人類の歩みを過去から未来へ辿っているようにも感じられるが、
実際には、同時にすぐ隣り合わせに存在していた。
異なる世界が並行して存在し、それぞれの異なる「いま」を生きている。

「我々が「いま」此処に在るということは、その瞬間における意識の在り方、選択の集積なのだ」
(あとがきより)

それぞれの場所や個人が形成する現実の中で、何を選び、どう在るか。
作品に現れた光景たちは、「今」という時の在り方を問いかけてくれる事でしょう。
宇宙と地球のあいだを行き来し、絶対的な世界を捉えた『夜明け』、
森の中で自らの深淵に潜り、自然との関係が如何に相対的であるかを探った『自然 JINEN』、
そして、今作では個々の意識や世界が集合し形成されるパラレルな時間と空間のあり様を説いています。
作品に現れた時空を超えた光景が、多元的な旅へ導く一冊。

本書は2020年に刊行した『惑星』を、山内自身が刊行後に得た体験を元に見つめ直し、再編集した新装改訂版です。
遊牧民たちの暮らしを捉えたパートには未発表作品を加え、写真が大きく見えるようにレイアウトを変更。
現代の文明都市、街のスナップでまとめたパートは一章丸ごと構成し直しました。
砂漠のパートでは片観音開きになるページを追加し、表紙デザインは継承しつつも仕様を変更するなど、
大きくリニューアルした内容となっています。

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