<精神科医が昼夜の公園を舞台に写したパラレルワールドの世界>

このたび、1959年京都市生まれの精神科医・写真家の市川信也の写真集『2O14 [ni-ou-ichi-yon]』をふげん社から刊行します。

本作は、市川が愛読する村上春樹のベストセラー小説『1Q84』にインスピレーションを受け制作した作品です。ある日夜の公園で犬の散歩をしている時に見つけた「水銀灯に照らされた、滑り台、シーソー、ブランコがあるだけ」の情景が、小説のシーンを彷彿とさせ、現実と非現実の境界が失われたような感覚に陥ったと言います。

市川はその感覚を写真で表現すべく撮影を始めました。4×5inchの大判カメラで夜の公園の遊具を懐中電灯で照らしながら長時間露光したものと、中判カメラに赤外線フィルムを入れ昼間の公園を撮影したものの、2つのシリーズから本書は構成されています。

暗闇に浮かび上がる滑り台やブランコ、動物を模した乗り物などの遊具は、昼間の見慣れたものとは異なる様相でシュールなオブジェとして浮かび上がってきます。

現実世界をメタモルフォーゼする表現媒体である写真と、村上春樹の無意識部へ深く潜り込むようなパラレルワールドの世界とが美しく溶け合った本作を、ぜひご覧ください。また、並行世界を体現するような、宮添浩司による装丁にもぜひご注目ください。

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“つまり夜の公園は、まさに昼の世界とはまったくかけ離れた異世界としての姿が、くっきりと露わになる場所なのだ。市川はそのことに気がつき、日常的な時空間が、何か別なものへとメタモルフォーゼしていく様相を、精確に写しとることをもくろんだのではないだろうか”

飯沢耕太郎(写真集『2O14 [ni-ou-ichi-yon]』収録テキストより引用)

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