雑誌『写真』第2号では、個々に問題意識を持ちながら写真を通して目の前の現実に向き合っている写真家たちの作品に着目します。

さまざまな分野で生き方の多様性が問われる現代、
一つの問題を特定の言葉で括ってしまうことは、さらなる分断を生んでしまう危険性を孕んでいると感じます。

断片である写真や言葉が、それぞれの背景を持ち、それぞれの個性を放ちながら寄り集まることで、
彩り豊かなモザイク画のように社会世相の大きな地図が描けるのではないかという思いから、今号のテーマを「モザイク」としました。

「mosaic」とは、多数の異なる色の石やガラスなどの小片を組み合わせた装飾美術の技法であり、ギリシャ神話の女神に捧げられた洞窟にこの装飾が施されていたことから、ラテン語の「ムーサ(ミューズ)」が語源とされています。また、日本国内における「モザイク」は、プライバシーや個人情報保護のため、またアダルトビデオでの画像加工技術など、隠すことやぼかすことの意味合いでも広く普及しています。

一枚の写真は粒子やピクセルの集合体であると同時に、世界の切り取られた断片でもあります。
一枚のピースに近づきすぎると見えなくなることが、引いて見ることで隣り合う断片が連なり、
共鳴しあって別の世界観を作り出すことができます。

ダイバーシティが求められる現代社会を生きる上で、
写真家たちが世界に寄り添うようにしてとらえた眼差しのモザイクが、
写真を撮る側と見る側にとって、新たな視点のきっかけとなることを願います。

『写真』編集長 村上仁一

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【Contents】

[口絵]
片山真理 Mari Katayama
須藤絢乃 Ayano Sudo
西野壮平 Nishino Sohei
野村佐紀子 Sakiko Nomura
梁丞佑 Yang Seungwoo
レスリー・キー Leslie Kee
石内都 Miyako Ishiuchi
古屋誠一 Seiichi Furuya

打林俊「曖昧 me mind ― 現代日本写真に見る自我と関係性をめぐって」

宇佐美雅浩/苅部太郎/菊地智子/千賀健史
千葉桜洋/殿村任香/七菜乃

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[CURRENT REVIEW]
飯沢耕太郎

小原真史「見られる身体/見る身体 -博覧会におけるまなざしの交叉」
冨山由紀子「銀色夏生試論:『少女』と『少年』の領域」
藤木TDC「AVモザイク修整の歴史」
調文明「日本の写真賞の現在」

[INTERVIEW]
モレイラ・サレス・インスティテュート現代写真部門長
チアゴ・ノゲイラ(聞き手=速水惟広)

古屋誠一×小林紀晴
「古屋誠一、10年の空白を経て、再び。」

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[ESSAY]
岩根 愛
大澤紗蓉子
カレー沢薫
小林美香
末井 昭
中村紋子
那和秀峻
RHYMESTER宇多丸
Jörg Colberg
鳥原学

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