1957年愛知県岡崎市生まれ、第1回田淵行男賞受賞者である高木誠の最新写真集『生きている大地』をふげん社から出版いたします。

作者は、日本の第一級の山岳景勝地であり、国内外から年間 120 万人以上の観光客が訪れる上高地(長野県松本市)を自身のメインフィールドと据えて、20年以上撮影を続けてきました。本作は、一万二千年前の大噴火からの悠久の時の流れによって醸成された、上高地の美しい地形と、そこで育まれた原始的な自然に相対した時に感じられる「霊性」を表現したモノクローム作品です。
森羅万象に魂を見る「日本人の自然観」を手がかりに、穂高岳などの高山と、梓川が時を刻み形作る谷や岩、そして多彩な生命が育まれる森林や湿原を通して、上高地の中に一つの輪廻を見出しました。写真集は、その循環を表した4つの章「天 光と大気」「地の刻」「水は巡る」「森の輪廻」で構成されています。

日本人にとって、神仏や魂が宿る自然は心の拠りどころであり、縄文時代を源流とする宗教や文化・芸術の基底に流れるイデアとなっています。その神秘的な光景を捉える眼と、高い撮影技術、そして精緻にコントロールされたプリントワークは、高木が自身の五感を通して感じた心の震えを、余すところなく伝えています。
深みある黒の表現をダブルトーン・オフセット印刷で実現した写真集『生きている大地』を、ぜひご覧ください。
写真作品56点のほか、東京都現代美術館 事業企画長の関次和子氏、元 田淵行男記念館 副館長の財津達弥氏のテキストを収録しています。

“作品からは、厳しい季節も含め、何度もこの土地に通い続けることにより、山と同化し、自然の中のリズムと自己の感性を共感させようとする高木の姿が伝わってくる。”
関次和子(東京都現代美術館 事業企画課長)

“この長年にわたる高木さんの試みには、現代社会への批評精神が内在している。光の及ばない黒い空間、目に見えない深い領域が、見る者の想像力を掻き立てるのである。”
財津達弥(元 田淵行男記念館 副館長)

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