<東京の東側からバブル期の80年代後半〜90年代初頭をカラーフィルムでとらえた、太陽賞受賞作・木村伊兵衛写真賞受賞作を含む3つのシリーズを収録。大山 顕、土田ヒロミ寄稿。>

本書『TOKYO EAST WAVES』には、木村伊兵衛写真賞作家・大西みつぐ(1952-)の、1980年代後半から1990年代初頭にかけて、東京東部とその近郊の街をスナップした3つのシリーズが収録されています。

第22回太陽賞受賞作「河口の町・江東ゼロメートル地帯84」(1985)は荒川と中川の河口付近を、第18回木村伊兵衛写真賞受賞作「周縁の町から」(1992)では、千葉県北西部から埼玉南部などの東京近郊の都市に足を伸ばし撮影。そして「NEWCOAST」(1995)は、自身が江戸川区臨海町に居住を移した後、東京湾岸を舞台に撮影しています。

いずれも中判カメラ「マキナ670」を使用してカラーのポジフィルムとネガフィルムで撮影されたものです。これらはモノクロームのシリーズ「WONDERLAND」と同時並行して制作された重要な作品群で、写真集として初めて出版されます。

バブル景気という奇妙な時代における市井の人々の生活と振る舞いが、同時代の一員でもあった大西によって、克明に記録されています。

2023年に日本写真協会学芸賞を受賞した写真家・ライターである大山顕氏によるテキスト「“片目の犬” マキナ670」と、戦後日本が生んだ、優れたドキュメンタリー写真作家である土田ヒロミ氏によるテキスト「大西みつぐの断腸日記」を収録。

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“要するに『TOKYO EAST WAVES』は現代の『武蔵野』なのである。この作品は130年ぶりにビジュアル版としてアップデートされた『武蔵野』だ。”(大山 顕)

“かつての千葉・浦安の工業地帯や住宅地帯の「ケ」を収奪して、「ハレ」としてのディズニーランド化、遊園地化への急速な状況変貌をドキュメントしている。” (土田ヒロミ)