6名の方が本写真集へのメッセージをお寄せくださいました。
執筆者の方は以下のとおりです(掲載順、敬称略)

谷川俊太郎(詩人)、坪川拓史(映画監督)、大竹昭子(文筆家)、タカザワケンジ(写真評論家)、小林美香(写真研究家)、長尾敦子(デザイナー)


白から黒へためらいながら歩いて行って
眼から魂へ一瞬で飛ぶ
でも心は気づかない
自分が誰の夢を証ししたのか

谷川俊太郎

(「キチムは夜に飛ぶ」に寄せて うつってる より)


「キチム、キチム、キチムは よるに とぶ」
夢と現実が交錯する2歳の長女が、あるとき口ずさんだ。
キ、チ、ム。
耳慣れない響き。まるで呪文のようだ。
「きちむ」は「吉夢」。
「縁起の良い夢」「幸先の良い夢」という意味があることを後に知った。
この言葉を当時の彼女が知る由も無く、突然口にしたこの言葉が、未来のお告げのように、朧げだけれど確かな明かりに見えた。
吉夢のイメージは、毎日繰り返される日常、時に味わう非日常の断片をすくい続ける。
これまでもこれからも。
私は何を見るのだろう。

(作家テキストより)


夫と娘二人、猫と暮らす作家が、夢と現実が交錯する摩訶不思議でユーモラスな世界を、情感豊かに捉えました。

妻として、母として、写真家として葛藤を抱える日々で、「夢」は幸せの象徴でもありました。

思考の枠を解き放つ「吉夢」の豊穣な世界を、ご堪能ください。