原風景は写真家に何をあたえ、刻印したのか? 冬枯れた山々を追いかけ各地をめぐった小林紀晴の新境地。

アジアや世界各地への旅、そして日本の神事や祭りを追いかけ数々の作品集・エッセイをあらわしてきた小林紀晴。最新作『深い沈黙』では故郷・諏訪地方で見続けてきた冬の原風景を発端に、日本各地の冬山の光景を撮影している。視界を覆うのは、曇天にぬり込められた、沈黙したモノクロームの世界。まるで自然そのものが、黙し悲しんでいるかのような。ことばを持たない自然の嘆きを繊細な描写と丹精な印刷表現で表現した美しい大判の写真集になりました。初公開の作品31点と自身による解説、および山内志朗(倫理学、哲学研究)によるエッセイを収録。

 

■小林紀晴
1968年長野県生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。新聞社カメラマンを経て1991年独立。アジアを多く旅して作品を制作する。また近年は日本国内の祭祀、自らの故郷である諏訪地域などを撮影している。紀行、ノンフィクション、小説なども執筆。近著に『まばゆい残像』『孵化する夜の啼き声』『深い沈黙』など。1997年『DAYS ASIA』で日本写真協会新人賞、2013年『遠くから来た舟』で第22回林忠彦賞を受賞。2021年に初監督映画作品『トオイと正人』で国際ニューヨーク映画祭、南京国際映画祭入賞。東京工芸大学芸術学部写真学科教授。